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【なぜアメリカか】
二十世紀は、アメリカをイギリスから独立した単なる広い国から、世界をリードする大国へと変えました。
60年代の公民権運動から発して、一人の大統領と一人の大統領候補、それに一人の偉大な黒人のオピニオン・リーダーの犠牲と引き替えに、現在のアメリカは、諸々の差別がなくなりました。
アメリカ人のリーダーシップ的素質を感じさせるものに、バランス感覚があります。好いと思ったこと、正しいと思ったことには、ぱっと雪崩をうったようにそちらの方になびきますが、失敗した場合、自分の考えが間違っていたと気付いた場合には、見事なくらいすっぱりと軌道修正します。
ジョージ・ブッシュとビル・クリントンが大統領選で争っていた頃のことです。その前年の湾岸戦争終結時には、ブッシュ大統領の支持率は90パーセントを超え、誰もがブッシュで決まり、と思っていました。ところが、1年経って蓋を開けて見ると、クリントン大統領の誕生。
経済政策の失敗が、たった1年で支持率を激減させた原因でしたが、アメリカ人のあまりにもドライな割り切りに、戸惑いを感じました。
結果的には、経済も立ち直り、アメリカ人のその時の選択は正しかったのでしょう。
アメリカには今の日本にはない、良いところがたくさん有ります。
まず、愛国心があります。セレモニーでは必ず国旗が掲揚され、国歌が歌われます。小学校の低学年では、毎朝授業の始まる前に、クラス全員が「プレッジ(誓の詞)」を唱し、国旗に対して忠誠を誓います。小さい時から「忠誠心」が培われるのです。
アメリカ人は個性を尊重しますので、他の人やモノに左右されません。例えば、勉強が好きでなければスポーツや音楽に興味を持つように誘導し、誰もが一つの価値観に右往左往する、ということはありません。
自由で平等な社会。自由であることの大切さを知っていますから、そのための義務や犠牲を惜しみません。
アメリカには世界中の国の人々が集まっているので、世界の基準で社会生活が営まれています。
アメリカに世界中の人が集まって来るのは、アメリカが単に豊かだから、というだけではなく、アメリカには仕事・研究をしやすい環境と、人種・男女に関係なく能力を認める柔軟さと、有名無名に関係なく、良いものは良いと認める良識の尺度があるからです。
わたしは1986年からアメリカ暮らしを始めました。大学を卒業したばかりのまだ若い頃パリに住んでいたせいか、ヨーロッパの雰囲気が好きで、食べるのもフランス料理、着るものもヨーロピアン・ベーシックといった具合。仕事もファッション関係が長く、アメリカ派かヨーロッパ派かというと、一も二もなくヨーロッパ派でした。
ひょんなことからアメリカに住むようになり、来たばかりの頃は、何事もヨーロッパと比べて、「アメリカには伝統がない」とか「アメリカ人はただ陽気なだけ」と、内心バカにし、アメリカを好意的に見ることがなかったように思います。
地下鉄はともかくバスの本数が少なくて不便、公衆電話が日本に比べて極端に少ない上しょっちゅう故障している、デパートやモール等の公共の建物にトイレが少ない、アメリカ人は表面はニコニコして「ウエルカム」なんて言っているのに、外国人を見る目がとても厳しい、アメリカのレストランは何でも大盛り、「馬が食べるわけじゃないんだから」等など。
アメリカの悪い点ばかりが目についたものでした。
《好きになること!》
ホワイト治さんはアメリカ人と結婚して43年。息子さんは4人とも独立、今は弁護士のご主人と二人の生活に戻り、治さんは、生活に支障をきたさない時間を選んで、ガイドの仕事をしています。
ほとんどの仕事は日本からの観光客で、「レストランに入ったりホテルに着いたりすると、まっしぐらにトイレに駆けこむし、何をしてもらっても感謝の意志表示をしない。何かと言うとアメリカは不便だとか不親切だとか文句を言う。どこの国でもそれぞれの習慣があるし、やり方があるのだから、まずそれを知って欲しい。好意をもって理解しようとして欲しい。」 こんなふうにこぼしていました。
その当時は、トイレに行くのは生理現象だし、日本人は照れやだし言葉の問題があるから口に出して言わないだけ、日本に居るのと勝手がちがって思うようにならなければ、文句の一つも言ってみたくなるでしょうに、と内心反発していたものでした。
それから3年、わたし自身アメリカの生活に慣れ、慣れてくるにしたがって、アメリカという国、アメリカ人が理解できるようになってきました。
どんなことにもオモテとウラ、光と影があって、外国人にとっては不便この上ないことでも、そこに住んでいる人たちにとっては良いことがある。光が眩しければ、影に回ってみる。光の中にいるより一層光の美しさが分かるでしょう。
アメリカの生活に慣れてきて、アメリカの習慣を理解するようになると、わたし自身アメリカが好きになっていることに気付きました。
わたしは、「アメリカの良いところを知りたいなら、まずアメリカを好意の目で見るようにしなければ」と言った、治さんの言葉が正しかったのを知りました。
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