知りたいアメリカ

 アメリカ生活を始めて16年経ち、今ではアメリカの良いところと日本の良いところを取り入れて、自分流の快適な生活を送っていますが、アメリカで生活し始めた頃のわたしは、アメリカのシステムやアメリカ人を知らないために、ずいぶんと自尊心を傷つけられましたし、恥もかきました。
 今から10年前のことです。日本人の友達と、たわいのない話をしていた時のこと。
 彼女はあるアメリカの研究所に勤務している医師の夫人で、「日本から次から次へと来る後輩たちや友人の知り合い、そのまた知り合いの人たちの世話で忙しくて…」とこぼし始めました。
 「日本からアメリカに赴任してくる人たちのお世話って、とても大変なのよ。家探しの手伝いから、電話の申し込み、運転免許の取り方、どこで買い物するかまで、最初の一月間はほとんど付きっきり。時間も取られるし、お金も案外ばかにならない。
 先方も何かお礼をと言うのだけど、仕事でやっているわけではないので、お金をもらうわけにも行かないし、かといって変なものをもらっても邪魔になるだけだし、誰か代わりにやってくれる人はいないかしら。」
 いろいろと話をしているうちに、「あなた、やってくれない?」「やりましょうか。」ということになり、「ワシントンでの生活を快適に送るための」サービス提供を目的とした、ジャパン・インフォメーション・スペース(JIS)をスタートさせました。
 ちょうど、アメリカを知りたい日本人と日本を知りたいアメリカ人のために何か出来ることはないか、と模索していたわたしにとって、正に「渡りに船」といったタイミングでした。
 会員制でスタートし、現在300名を越える日本人、アメリカ人、韓国人の方々が会員になっています。
 日本人以外の会員は、日本の本やビデオを借りにきたり、習字や生け花といった日本の文化に興味を持っている人たちですが、日本人の会員の90パーセント近くは、アメリカ生活に関することの相談や依頼です。

「ワシントンに赴任する予定なので、それまでに家を探しておいて欲しい」
「電話を引きたいので、電話局に連絡して欲しい」
「一月以内に自動車免許証を取らなければならないので、何とかして欲しい」
「子供の学校の手続きはどうしたらいいのか?」
「病院へ行くのに、言葉が分からないし、不安なのでついて行って欲しい」
「今度お店を持とうと思っているので、適当な場所を探して欲しい」
「トール・ペイントを習いたいのだけど、良い先生を探して欲しい」
「ヨガを教えたいのでけど、誰か習いたい人はいないかしら?」
「日本人のお母さんのベビーシッターを探しているのだけど…」
「着物の着付けができる人はいないかしら?」
「ワシントン地域のガイドブックを出すことになったので、いくつかの代表的な町について、説明文を書いてくれないか?」
等など、様々な要望に応えています。

 初めてのアメリカ暮らしは、分からないこと、勝手が違うことがたくさん有ります。これは単に言葉の問題ではなく、習慣や文化の違いが大きな壁を造っているのでしょう。
 若い層の人たちは、必要なことは、アメリカへ来る前にインターネットや情報誌で調べたり、人に聞いたりして準備万端整えてきます。だから、何でもよく知っています。
 けれど、そういう知識は日本人同士での話題としては、十分に興味を引きますし、知っていて損ということはありませんが、日常生活に役立つことは少ないようです。読んだり、聞いたりの知識には限界があるのでしょう。
 以前、海外旅行が解禁され、日本人の海外での旅行者が目立ち始めた七十年代の初め、「海外で役立つ七カ国語会話集」なるものが評判を呼んだことがありました。わたしの母も、初めてフランス旅行をする時に買って、「〜駅はどちらですか?」「トイレはどこにありますか?」などの最低限必要な文章を、一生懸命フランス語で覚えようとしていました。ところが聡明な母親は、いくらフランス語で何と言うのかを覚えて実際に使い、よしんば相手に理解されたとしても、相手から返ってくる言葉が分からなければどうしようもないと考え、覚えるのを止めてしまいました。
  
 ドライとウエット、透明な国と不透明な国。この両極端な国の国民性は、どのようなちがいをもたらしたのでしょうか。
 わたし自身も含めて、アメリカに住んで間もない日本の人たちが、知らなかったばっかりに、数々の恥ずかしい思いや悔しい思いを体験しました。そんな体験談を交え、「知っていたら良かった」アメリカ人の日常生活、教育・学校、ライフスタイルの実像を、クリアーで解りやすい実例にまとめてみました。
 これからアメリカへ旅行する計画のある方、アメリカに住もうと予定している方々に、アメリカ人と日本人のちがいを鮮明にお伝えすることができれば幸いです。


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【氈zアメリカ生活のABC
 
【A】アメリカ行きが決まったら

 アメリカ行きが決まったら、パスポートの申請やビザの取得などやらなくてはならないことが山ほどあります。
 誰でも、パスポートや航空チケットは予め前もって用意しておきますが、案外忘れがちなのがビザの取得。90日以内の観光目的の場合にはビザの必要はありませんが、その場合でも帰りのチケットを持っていなければいけません。それ以外は何と説明しても入国できない、と考えた方がよいでしょう。
  
1]ビザを取らなかったために入国できなかった婚約者

 一年ほど前、アメリカ兵・ジョンが血相を変えて尋ねてきました。
 相談の内容は、「日本に居る元婚約者から、二人の間に生まれた子どもを引き取りたいのだが」というものでした。
 沖縄駐留中、日本女性の菊恵さん(仮名)と結婚するつもりで同棲していて、現在二歳になる子どももできました。
 本国からの召還命令で、ジョンはアメリカに帰らなければならなくなり、帰国の準備で忙しく、「結婚の手続きはアメリカに帰ってから」と軽く考えていました。菊恵さんにも異存はなく、アメリカでの新生活に期待しつつロスアンゼルス空港に着きました。
 ところが、菊恵さんと子どもの二人は税関でストップがかかってしまい、入国できないまま日本へ送り返されてしまいました。
 菊恵さんは、ジョンが一緒ですからビザを取っていませんでしたし、アメリカで暮らすつもりですから帰りのチケットも、勿論持っているわけはありません。
 移民希望の外国人が次から次へとやって来るアメリカでは、年々移民制度が厳しくなっています。又、アメリカで永住権を取りたいために、アメリカ人と結婚する人も少なくありません。 
 広いアメリカです。国内に入られてしまえば手のうちようもないので、税関でのチェックはとても厳しく、彼女もその犠牲になった一人です。
 その後、ジョンはフィリピンの女性と結婚。現在、菊恵さんとの間で、子どもの養育権をめぐって係争中だということを、聞いています。
 ビザを取ってさえいたらこの様な悲劇は生まれなかったのに、とかえすがえすも残念でたまりません。

  

〈JISメモ @〉  

パスポートの申請   

パスポートは「日本国がパスポート保持者の身分を保証し、同時に責任を持つ」ことの証明書で、外務省から発給されます。有効期間10年と5年の2種類。
 必要書類:^一般旅券発給申請書
      _戸籍謄(抄)本
      `顔写真(縦45ミリx横35ミリ)2枚 

ビザの申請   

ビザは、アメリカ滞在中の身分が保証されている人に与えられる滞在許可証で、アメリカにある企業、学校、機関などが発行する身分証明書を添付して申請します。ビザの申請方法は三種類。
      ^投函 必要書類を封筒に入れ、所定の場所に投函する。
      _郵送
      `出頭 日時のアポイントを取り、直接ビザ申請書を手渡す



2]100キロの荷物でも超過料金ナシ

 最近日本への出張から帰ってきた際、本だけの荷物を作りました。
スーパーからもらったダンボール箱を利用したのですが、その重たいこと。チェックインカウンターで計ったら、何ともう少しで四十キロ。ヨーロッパ線ですと航空券以上の超過料金を取られるところです。

 近藤とも子さんはスタイリスト。アメリカへの撮影にたくさんの服を持っていかなくてはなりません。市販のスーツケースではどうしてもシワができるし、第一それ程入りません。その上アイロンかけに時間がかかる。
 そこで、近藤さんは(55×55×90)の段ボール製で洋服掛けの付いている特別製の箱を手に入れ、服をハンガーにかけたまま箱に入れ、チェックイン・カウンターに持ち込みました。アイロンかけの時間は省けるし、段ボール箱がそのまま洋服掛けにも利用できるので一石二鳥。他のスタッフの喝采を浴びたことは言うまでもありません。
 アメリカへの機内預かり荷物は一人二個まで。ヨーロッパ線とは異なり、重量には関係ありません。ただし、各バゲージ等の容器は縦、横、高さの合計が209センチ以内のもの、という規定があります。市販されている旅行用カバンは、ほとんどOKです。

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